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肌年齢の算出

70歳までの日本人の肌の状態を、機器を用いて測定した結果、角層水分量、皮脂量、水分蒸散量、肌理、皮膚色は年齢との相関性は低く、弾力性だけが年齢との相関性が高いことがわかりました。弾力性は肌のたるみの指標となります。また、露光部では、色ムラ (シミのもと)が加齢とともに増加することがわかりました。弾力性は日光があまりあたらない部位でも年齢との相関性が高いことから生理的老化の指標となります。また、パラメータによって光老化の指標になるものもあります。弾力性の数値を用いて肌年齢と実年齢の差を算出することが可能です。肌の弾力性は真皮のコラーゲンの機能によるところが大きいので、コラーゲンペプチド等の美容食品の摂取やマッサージによるスキンケアによって肌年齢を若く保つことができると考えられます。

肌のしわ

顔には20数種類の表情筋があり、喜怒哀楽の表情をつくります。この表情筋が動くときにできるしわは、若いころはすぐに消えますが、歳とともに肌に残ってしまうようになります。しわは目の周囲からはじまり、鼻根部、額、目元へと広がっていきます。これは、加齢に伴い皮膚の弾力や柔軟性が失われるとともに、筋肉の衰退が加わり、表情のしわが元に戻らなくなるからです。

乾燥による小じわ(目じりの浅い小じわ)は角層の水分が低下して柔軟性がなくなるために起こるもので、保湿スキンケアで一時的になくなりますが、加齢によるしわは真皮の変化によって起こるので、化粧品でなくすことはできません。

この加齢によるしわは、真皮乳頭層の数が減り、コラーゲンやエラスチンが減少し、それらの繊維が細くなったり、切れたりし、弾力性が失われるためにて゛きるのです。加齢によりコラーゲンやエラスチンなどの細胞外基質が十分につくられなくなると、真皮全体が薄くなります。これにより表皮と真皮の結合部が平坦化して、乳頭に密に分布している毛細血管が減少します。毛細血管が減少すると真皮や表皮へ供給される栄養分が不足して、真皮の線維芽細胞だけではなく表皮の細胞の機能低下も引き起こします。

また、太陽紫外線によっても、しわが引き起こされます。これは、加齢によって生じるしわとは性質が異なり、コラーゲンが変性して柔軟性がなくなることによって深いしわが形成されるようになります。この変性したコラーゲンが分解されないまま真皮に残り続けると、表情をつくったときの屈曲部のラインが元に戻りにくくなり、その部位が深いしわとしていつまでも残ってしまうのです。

表皮ターンオーバーの不調と角層の重層化、メラニンの蓄積

表皮のターンオーバーとは、表皮の新陳代謝、すなわち、表皮を構成している角化細胞が基底層で誕生してから角層を形成する角層細胞に角化し、垢として肌表面から剥がれ落ちる過程、いわば "表皮の生まれ変わり" をいいます。ターンオーバーによって角層が絶えず新しい角層に入れ替わることで、物理的及び化学的に抵抗力をもつようになり、微生物や有害物の侵入を防ぐことができ、外界から体を守ることができます。また、体内からの水分の蒸散を抑制することによって、正常な生命活動を維持することができるようになります。

このように、表皮のターンオーバーは生体の維持防御に重要な役割を果たしています。ターンオーバーが遅くなると、紫外線などの影響で過剰に産生されたメラニン色素が表皮に滞ったり、角層が一枚ずつきれいに剥がれないでたまったりして、肌の透明感がなくなってしまいます。また、古い角層は水分も失われているため表面がカサカサになり肌あれとなり、様々な肌の老化やトラブルを引き起こす原因となります。

基底細胞が分裂して有棘細胞、顆粒細胞と分化するのに14日、そして角層でバリアとして機能し、垢としてはがれ落ちるのに14日、合計で、およそ28日で生まれ変わるといわれていますが、これは、10代や20代の平均のサイクルであり、個人差が大きく、また、加齢とともに遅くなっていきます。例えば、30代で30日、40代で35日、50代は40日、60代は45日にもなります。また、石鹸やボディーソープに対する感受性、タオルでこする強さによってもターンオーバーは早まります。また、顔面のように日光にさらされている部位では被覆部位に比べてターンオーバーが早いことが知られています。アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患部位では、ターンオーバーが異常に早くなるだけではなく、不完全な角層が形成されるためバリア機能が低下します。

加齢により、機能全体が低下することで、ターンオーバーが遅くなります。すると、機能低下した不完全な角層細胞がつくられるため、保湿機能が保てず、角層の水分不足を引き起こします。さらにターンオーバーが遅いため、古い角層細胞がいつまでも留まり、角層が厚くなります(角層の重層化)。同時に角層細胞の面積も広がり、肌はごわついてきます。年齢とともに、表皮のターンオーバーが遅くなると、メラニン代謝・排出も低下し、紫外線を浴びて多量につくられたメラニンが、肌に滞りはじめます。メラニンが増加し、しみができやすくなるのです。

光老化した肌には

光老化した肌に最も効果的な治療法は肌再生です。残念ながら、化粧品や薬用化粧品には治療効果は認められていません。米国では、レチノイン酸(ビタミンA酸)がしわに効果がある医薬品として認められています。もともとは、にきびの患者さんに使っていたら、しわまで目だたなくなったことから、20年以上も前からしわに対する臨床試験が行われていたものです。レチノイン酸は表皮細胞の分裂を促して、表皮のターンオーバーを早くします。それにより表皮の厚みが増し、角層が薄くなっていきます。また、真皮にも作用し、変性したコラーゲンの分解を促進し、線維芽細胞のコラーゲン合成を高め、新しい真皮組織を構築していきます。これは軽い炎症にともなって起こる生体防御反応を利用したもので、肌が赤くなったり、ヒリヒリするのをのりこえると、数か月後にはしわが改善します。ただし、作用が強いので、皮膚への負担が大きく、皮むけや赤くなるなどの副作用がありますので、医師の指導下で経過を見ながら治療していくことが必要となります。

また、角層が薄くなり、不全角化した角層が肌表面に現れるので、機器で測定すると角層水分量が増加しますが、紫外線の一番のバリアである角層が薄くなるので、治療期間中は日光にはあたらないようにしましょう。レチノイン酸は0.05%や0.025%の医薬品がしわに効果があることが報告されています。レチノイン酸の末端のカルボン酸がアルコールになったレチノールや安定化した酢酸レチノールやパルミチン酸レチノールを0.01%程度配合した化粧品があります。これでもヒトによってはヒリヒリとした刺激感が現れることがあります。配合量が高ければ効果的との報告があります。

肌のヒアルロン酸は40歳後半から減少

肌のヒアルロン酸は、加齢とともに減少し、40歳後半から急激に減少していくことが報告されています。ヒアルロン酸はアセチルグルコサミンとグルクロン酸の二糖単位が連結した高分子多糖で、分子量は100万以上になります。ヒアルロン酸は、わずか1グラムで6リットルの水分を吸着すると言われ、優れた保水性を持っています。ヒアルロン酸は真皮に多く含まれ、水分を保持し、肌のみずみずしさ、ハリ、弾力性に深く関っています。

ヒアルロン酸は分解されやすいので、真皮の線維芽細胞は絶えずヒアルロン酸を合成しています。この合成と分解のバランスが崩れると、若い人でも肌のヒアルロン酸が不足する可能性があります。

肌の弾力性とコラーゲン

皮膚のハリや弾力性は加齢とともに減少していきますが、このハリや弾力性に大きく関係しているのが真皮のほとんどを占めているコラーゲンです。皮膚のコラーゲンの新陳代謝(生まれ変わり)は遅く、一度できてしまうと、新しいコラーゲンにすべて置き換わるのに20年以上かかります。ですから、皮膚のなかで、紫外線(UVBとUVA2)のダメージが一番蓄積されるのがコラーゲンなのです。コラーゲンは紫外線によって悪玉架橋が形成され、硬くなっていきます。このように機能が低下したコラーゲンは早く分解してあげて、新しいコラーゲンを再生する必要があります。コラーゲンを分解する酵素はMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)群のなかのコラゲナーゼという酵素です。真皮のコラゲナーゼには組織コラゲナーゼ(MMP-1)と好中球コラゲナーゼ(MMP-8)があります。

コラゲナーゼは、I 型とIII 型コラーゲンのへリックス部位(三重らせん部分)を特異的に切断し、三重らせんをほぐす働きがあります。そうすると他のタンパク質分解酵素がやってきて、アミノ酸に分解してくれて、そのアミノ酸が新しいコラーゲン合成に再利用されます。MMP-1は、不活性なProMMP-1として線維芽細胞から放出され、細胞外でプラスミンなどのセリンプロテアーゼによって活性化されて、酵素として機能するようになります。線維芽細胞はMMP-1やコラーゲンを作ります。線維芽細胞を活性化して、悪いコラーゲンの分解を促進して、新しいコラーゲンの再生を促進させることで、ハリや弾力性をいつまでも保つことができると考えられます。ビタミンCには線維芽細胞のコラーゲンの合成を高める作用があります。

たるみについて

「UVAでたるみが生じる」という記事を美容雑誌でみました。顔のたるみには主に加齢による表情筋の衰え、皮下脂肪の蓄積、真皮の衰えなどが関与しています。特に、加齢によって皮膚は伸びやすく戻りにくくなるので、皮膚の張力の低下が関与していると考えられます。UVAは真皮浅層までは到達しますが、脂肪層・筋層までは到達しません。ですから、UVAがたるみの主な原因ではありません。たるみはストレッチで表情筋を引き締めたり、マッサージで血行を促進することである程度防止できます。

Maeda-lab.com

Aesthetic Science Research Lab., Tokyo University of Technology in Japan